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北アルプス・ブーメラン
二人のアスリートが残した冒険道

Photography by Sho Fujimaki and Doryu Takebe

2021年8月1日、日本が4年に1度のスポーツの祭典に注目し、街では長期に渡る自粛状況が続く中、ある2人のアスリートが「夏の大冒険」を求め、装備品の詰まったザックを抱えて、長野・富山・岐阜の県境にそびえる北アルプスへと旅立った。

3つの目的

教員からプロのトレイルランナーに転身した「ヤマケン」こと山本健一と、ウルトラトレイルコミュニティで名を馳せる、消防士で山岳救助隊員の望月将悟は、この旅にいくつかの目的を掲げていた。それらは、決してスピード記録や競技性を狙ったものではなく、山を愛する者として、山への純粋な思いを満たすためのものだった。

「一つは、知らない場所や景色の発見。その道が安全なのかの下調べ。いつかは外国人の登山者やトレイルランナーにも来てもらいたいので、いわば、日本山岳地の新しい広報活動ですね。二つ目は、登山者とトレイルランナーの線引きの排除について考えること。手段が違うだけで、山を登る目的は同じだと思うから。そしてもう一つは、北アルプスの稜線散歩です」

そう語る望月に、友人であり山の仲間である山本も共感した。

「​​北アルプスは、岩があり、雪があり、きれいな花が咲いていて、富士山まで一望できる日本の代表的な山域です。そこを一気に旅して、改めて日本の山の素晴らしさに気づくこと。そして、そのトレイルが安全で、日本や海外の登山家やトレイルランナーに紹介できるのかどうかを確認したかったです」

ルートとセグメント

長野県の北西に位置する白馬駅を出発した2人は、まず白馬岳線を辿って白馬岳を登り、そこから唐松岳に向かって南下した後、西にある餓鬼山を通過しながら、そのまま黒部川の西側を目指した。「黒部に怪我なし」(怪我だけでは済まされない、死に直結することもあるようなポイント)とはここのことである。その後2日間をかけて、剱岳や黒部五郎岳といった、2500m~3000m級の山々の稜線を南に辿って、上高地へ。上高地を折り返し地点として、今度は槍ヶ岳や蓮華岳などを通る黒部川の東側の稜線を3日かけて北に進み、再び白馬駅に戻ってきた。黒部川を軸とした、まさに「北アルプスブーメラン」ルートである。

常にその顔色を変える北アルプスの山々に魅了された2人は、登山者やトレイルランナーに特に紹介したいと感じた区間を記録するため、Stravaのセグメントを作成した。

双六

「景色がとてもきれいです。双六岳は槍ヶ岳に吸い込まれるような感じがします。平坦な道を進めるところもいいですね。海外のような区間です」

白馬大雪渓

「夏に雪の上を歩ける心地良さや、雪渓を歩いているときの山が迫ってくる感じが好きです。また、雪渓が終わると高山植物が出迎えてくれます。荒々しい山肌とお花畑の共演がいいですね。人が多いので譲り合いの気持ちで登れるといいと思います」

七倉岳

「あまり人が通らないマイナールートですが、道はそんなに悪くないのでぜひ通ってもらいたいです。蓮華岳のガレ場も楽しいです。針ノ木小屋は、扇沢から登ってくるお客さんでにぎやかで、安心しますし、このギャップも好きです。針ノ木岳からの景色も素晴らしいです」

今回の旅の中でも比較的安全に通れる場所としてセレクションした3つの区間。登山者にも、トレイルランナーにもぜひ体験してほしい場所だと2人は言う。

6日間の道中

6日間、距離268.25km・総獲得標高21,087mに及ぶ大冒険を経て、両名が口を揃えて感じたこと。

「動いている時間全てが楽しかった」

そう振り返る望月に、山本も終始天候に恵まれた幸運を噛み締めていた。

「登っているときは時折雲がかかり風も吹いて楽に登らせてくれて、山頂に行くと晴れました。もしかしたら、これには僕たちのある行動が起因しているかもしれません。それはゴミを『チケット』として、拾い続けたこと。『チケットゲット!』と言って、楽しくごみ拾いをした結果かもしれませんね」

登山とトレランの関係性

北アルプスを冒険しながらの6日間、常に行動を共にしていた2人は、道中でいろいろな言葉を交わした。その中でも印象的だったのが、今回の旅の目的の1つでもある「登山者とトレイルランナーの線引きの排除について考えること」をテーマにした会話だったと山本は言う。

「登山はトレイルランニングにとても有効で、また反対にトレイルランニングは登山にとても有効だという話です。今回のような超長距離を一気に歩き通すには、まずは体力が必要です。私はトレイルランニングで培った体力を十分に発揮することができましたし、装備の軽量化についてもトレイルランニングの知識を生かすことができました」

登山など、時間をかけてトレイルをゆっくり進むアクティビティには、トレイルランニングから得られる知識や能力があるが、逆もまた然り。望月もこの話題について、自身の考えを共有した。

「トレイルランを始めるには、まずは小走りで山を下ってみてはどうだろう、と話しました。少しずつ走りに慣れて、次は装備も気にしてみようと、ファスト登山者の装備にも注目してもらったらどうかな、とも。現在の登山道具は軽さや大きさ、性能と、今の気象状況にあったものがたくさん売られています」

「登山は、気持ちの面でもゆとりが出ます。ゆっくり進める分、すれ違う人との会話や、景色をより楽しめます。トレイルランでもそんなゆとりがあれば、さらに楽しめるのではないでしょうか」

登山者とトレイルランナー。アクティビティとしての差はあれど、同じフィールドと山への愛を分かち合う者同士、お互いの理解を深め、共存していく未来を目指している山本と望月。そんな2人がセグメントとして残した「みんなに紹介したい景色」は、歩く人にも走る人にも、冒険を求めるアスリートたちに開かれている。