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FKT Stories
上田瑠偉
秋田県・お山かけFKT

「泣ぐごはいねがぁ、悪いごはいねがぁ」
ナマハゲのことを知らない日本人はほとんどいないだろう。秋田県といえば、でよく名まえの挙がる、県内東部の男鹿半島に伝わる大みそかの風習だ。そしてこの地にはもうひとつ、日本人のほとんどが知らないけれど、でも地元の人にはよく知られた山道がある。

「お山かけ」

上田瑠偉が秋田県でのFKTチャレンジに選んだのはこのコースだった。


AN INTERVIEW WITH
RUY UEDA
(山岳ランナー/スカイランナー・ワールド・シリーズ2019年間王者)

PHOTOGRAPHY BY SHO FUJIMAKI

2019年のスカイランナー・ワールド・シリーズにて年間王者に輝いた上田瑠偉は、世界的に多くのレースが中止となった2020年秋、日本全国47都道府県にてFKTの記録を残すJAPAN FKT JOURNEYをスタートさせた。



「このプロジェクトを通じて全国各地に記録を残すことで、もっと身近に僕のことを感じてもらったり、速さを体感してもらえる機会になれば。レースが少なくなっているなか、全国のランナーに挑戦してもらえるような何かを生み出したいという思いもあります」

上田は山岳レースの本場であるフランスへの移住を予定している。ヨーロッパへと軸足を移してしまえば日本国内のレースに参加する機会が限られてしまうが、全都道府県に刻まれるであろうFKTの記録を通じて、いつでも世界王者に挑戦することができるというわけだ。

本格的な冬場に入る前にと、東北からアタックを始めた上田は、この「お山かけ」で秋田県のFKTを記録するため、サポートメンバーと共に男鹿半島に来ていた。

「一人前」への石段

「お山かけ」は毛無山、本山、真山の男鹿三山を駆け抜け、真山神社へと通じる約10kmのコースだ。古くは修験の道として栄え、お山かけの愛称で親しまれた。

男鹿半島の人々にとっては、このルートを踏破できれば「一人前の大人」と認められる、通過儀礼のようなコースだという。実際に地元の中学生が全校行事として歩いたり、定期的に「お山かけ」のイベントが催されていたりする。ただし、いずれも真山神社からナマハゲ立像の待ち構える門前駐車場へと南下する、下り基調のワンウェイにて行われることが多い。今回は秋田市周辺のトレイルランナーからタイムアタック、脚試しのフィールドとして認知されている、このルートを往復する。

「お山かけは、秋田のトレイルランナーの方からの紹介です。地元の人の馴染みのコースや、ローカルコミュニティ内で知られるマイナールートを教えてもらうことで、自分自身の世界が広がります。そしてそのコースでFKTに挑むことで、その土地の人たちに上田瑠偉のことを知ってもらうきっけにもなります。

今回のプロジェクトをJOURNEYと呼ぶことにしたのは、トレイルランニングは旅の要素が魅力のアウトドアスポーツだから。全国各地でローカルランナーの方々に協力をお願いして、ご当地グルメや観光スポットにもアテンドしていただいているんです」

セグメントを走る

チャレンジ前日はスタート地点であるナハマゲ立像前の旅館に泊まり、案内役をかって出た地元のランナーたちと海の幸に舌鼓をうった。翌朝、補給のための水分や食糧、安全のための装備一式すべてをバックパックに詰め、お腹が落ち着くタイミングでいざ時計のボタンを押す。

まずは一度海側へと降りる。そして赤神神社の長い長い石段を登る。上田はこの石段を一歩も歩かず、さも当たりまえのように走り抜けていった。一説には999段あると言われ、ナマハゲが一晩で積み上げたという言い伝えが残されている。気になったら実際にチャレンジして数えてみてほしい。

「お山かけのトレイルは走りやすいサーフェスで、ところどころで日本海が眼下へと開けるのが魅力です。当日は抜けるような青空に恵まれて、気持ちよく走れました。復路では自分が海へ向かって飛び込むかのように走ることができます」

「ただし一箇所、本山の北側斜面にあたるワイルドな激坂のキントリ坂が鬼門です。前を行く男性の“キン”を掴みながら登るほどきつい坂ということから、この名前がついたそうです。その名の通り斜度がキツく、そしてテクニカルな路面のため、無理をせずセーフティ重視で通過したほうがよいでしょう。

その分、タイムを狙うのであれば真山神社を折り返してから、本山まで登り返す区間がポイントです。急な木段が続くので、ここで踏ん張ってプッシュできるかどうか。最後に戻ってくることになる999段の石段も、段差がランダムなため復路(下り)では難易度がアップします」


Strava上での記録によると、お山かけルートは全長20.1kmで、累積標高差は1600mほど。

タイムは2時間1分18秒。

世界一速いランナーが男鹿に刻んだこの記録を破るのは、誰だ。

イラスト:Owen Delaney (@waymarkedart)

FKTという「遊び」

—FKTとは最速記録を競う「遊び」なんです—
上田はJAPAN FKT JOUNEYを紹介する自身の動画内でそう表現している。

「何百kmにもおよぶロングトレイルのFKTを見聞きするのは楽しいのですが、誰もがチャレンジできるわけではありませんよね。JAPAN FKT JOURNEYを通じて、陸上など他競技のアスリートや若い世代の学生にもチャレンジしてもらいたいんです。全国各地に記録があることで、いろいろなところから僕を目指して、さらには超えていくようなランナーが出てくることも期待しています」

そのため距離の設定は20km程度まで。ハイカーの多いメジャールートも避けている。たとえば岩手県の「岩手山焼走りFKT」では登山口から6.5km、標高差1466mほどを駆けあがり、岩手山のてっぺんでフィニッシュする。チャレンジして一息ついたあと、360°の大パノラマを噛みしめられるように。

すなわち、今回のプロジェクトのコース設定にはプロとして、第一人者としての思いが込められている。

「どこかの誰かにとって、JAPAN FKT JOUNEYが行きたい山を見つける旅のきっかけになれば嬉しいですし、その地その地で食文化などを楽しんでもらえたら。僕自身も大いに楽しんでいるんです」

トレイルランニングを通じて自分の人生を豊かにしたい。それが上田瑠偉の根っこにある。上田自身のモチベーションからスタートしたJAPAN FKT JOURNEYは、地域のランナーを巻き込みながら、日本全国のランナーのインスピレーションも刺激しはじめている。

上田瑠偉(うえだ るい)
1993年生まれ。プロ山岳ランナー。駅伝の名門、佐久長聖高校で全国を目指すも、故障に悩まされ叶わず。進学先の早稲田大学陸上同好会在籍時にトレイルランニングと出会い、2014年の日本山岳耐久レースを大会記録で制する。2016年にスカイランニング世界選手権スカイマラソンで12位、ユース世界選手権優勝。CCCで2位。その後も世界の舞台で活躍を続け、2019年はスカイランナー・ワールド・シリーズで年間チャンピオンに輝く。
Strava | Japan FKT Journey

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